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年俸制とは?月給制との違いやメリット・注意点をまとめて解説

転職活動をするなかで、「年俸制」の求人を見かけることもあるでしょう。

月給制に比べて年俸制を導入している企業は少なく、年俸制に馴染みがない人も多いのではないでしょうか。

本記事は、年俸制がどのような賃金制度なのか、月給制と何が違うのか解説します。

年俸制を選ぶメリットと注意点についても併せてみていきましょう。

年俸制とは

年俸制とは、労働時間に関係なく、労働者の成果によって給与額を決定する賃金制度です。

年俸の金額(年俸額)は、1年単位の給与について企業と従業員が話し合い、お互いが合意することで決まります。年俸額は1年単位で決まりますが、労働基準法によって給与の支払いは月に1回以上と決められているため、毎月決まった日に年俸額を分割した金額が振り込まれます。年俸制だからといって、年に1回まとめて給与が振り込まれるわけではありません。

引き続き、年俸制がどのような賃金制度なのか、詳しく確認していきましょう。

企業が年俸制を採用する目的

企業が年俸制を採用する大きな目的は、「業績への評価を明確にするため」「賃金を業績に応じて分配したい」「実力主義に寄せたい」などが挙げられます。

継続して勤務している場合は、前年度の成果をもとに翌年の賃金の一部または全てを決定します。年俸制においては、前年度の成果に対して給与が決まるため、業績が振るわなければ年俸額は下がります。よって、年俸制は、完全成果主義に近い賃金制度であるといえます。

年俸制と月給制・日給制の違い

年俸制と比較したいのが、「月給制」「日給制」です。

月給制:月単位で給与額を決定し、毎月給与が支給される賃金制度

日給制:1日単位で給与額を決定し、出勤日数分の給与が支給される賃金制度

年俸制は、年単位で決まった年俸額を分割した金額を毎月受け取るため、月の給与額はあらかじめ決まっています。一方で、月給制は残業や各種手当などによって、毎月受け取る金額が変動する可能性があります。日給制でも、勤務日数によって給与額が変動することから、毎月受け取る金額は流動的です。

年俸制と月給制・日給制では、「1年で支払う給与額が決まっているのか」が異なるといえます。

年俸額の決め方

年俸額の決め方は、基本的に前年度の成果を参考にしますが、詳細は企業によって異なります。あらかじめ賃金規定に計算方法や評価基準となる金額が定められているケースもあれば、契約更新時に会社が金額を提示して合意を目指すケースもあります。

そのため、年俸制の企業への転職を考える場合は、契約を結ぶ前に「雇用契約書」や「就業規則」をよく確認する必要があります。

ここで注意したいのが、労使で合意を得ず、企業側の一存で金額が決まってしまうケースです。労働者側の合意がなく金額が決まる場合は、とくに評価基準や不服申し立ての手続き方法が規定されているのか確認しなければなりません。

残業代・賞与の扱い

年俸制で気になるのが、残業代や賞与・ボーナスが年俸額に含まれるのかという点でしょう。結論として、残業代も賞与・ボーナスもケースバイケースで、年俸額に含まれることも含まれないこともあります。

年俸制であっても、週40時間・1日8時間という法定労働時間を超えて働いた時間については、残業代の支給が必要です。ただし、みなし残業代制度(固定残業代制度)を採用している場合は、みなし残業代として一定時間分の金額が年俸に含まれているため、規定時間内の残業については別途残業代が支払われることはありません。そのほか、管理監督者や裁量労働制の対象者の場合も、年俸額に残業代が含まれないことがあります。

賞与・ボーナスは、企業によって対応が異なります。年単位で決められた金額に賞与が含まれることもあれば、賞与が含まれずに別途賞与が受け取れることもあります。賞与を年俸に含める場合は、ボーナスも分割し、給与と一緒に毎月支給されます。

年俸制で働くメリット

続いて、年俸制で契約して働くメリットをみていきましょう。

・収入の見通しが付くため長期計画が立てやすい

・成果次第で大幅な収入アップが狙える

年俸制の会社への転職を考えている検討している場合は、自分に合う賃金制度なのかを確認してください。

収入の見通しが付くため長期計画が立てやすい

年俸制では、年収がいくらになるのかを年度初めに確認することができます。月給制の働き方よりも収入の見通しが立てやすく、業績不振などによる給与の減額もありません。

安定した収入が得られることがわかっていれば、各種ローンの支払いや旅行、大きな買物など長期的なお金の計画を立てることができます。結婚や子育てなどプライベートのライフプランも考えやすくなるでしょう。

成果次第で大幅な収入アップが狙える

年俸制では、基本的に成果に対する評価で給与が決まります。成果主義的に年俸額を決めている企業であれば、頑張り次第で大幅な収入アップが狙えます。年収が上がりにくい若手であっても、実力さえあれば高収入を得られるのです。

成果に応じて給与が決まると、給与を下げないように、より年俸額を上げられるようにと、モチベーションアップにつながります。モチベーションが上がることで、さらなる収入アップも期待できるでしょう。

年俸制で働くデメリット

年俸制で契約して働くデメリットも存在します。

・成果次第で収入ダウンもあり得る

・成果がすぐに給与に還元されない

一定のリスクがある働き方なので、デメリットを踏まえたうえで年俸制で働くのかを決めたいところです。

成果次第で収入ダウンもあり得る

成果が給与に直結するということは、業績が振るわなければ収入はダウンするということです。なかには、成果次第で給与が決まることにプレッシャーを感じ、実力を発揮できないという人もいます。そのため、プレッシャーのなかでも頑張り続けることができるだけの強いメンタルを持った人でなければ、挫折してしまう可能性もあります。

ただし、労働基準法において、減給の限度額が定められています。成果が出なかったからといって、会社が際限なく減額できるわけではない点は覚えておきたいところです。

成果がすぐに給与に還元されない

年俸額を決めるのは年に1度なので、いつ大きな成果を出しても、その成果が給与に反映されるのは翌年度となります。月給制であれば昇給のタイミングは年に2回程度ある企業が多いため、成果が還元されるまでの時間は年俸制のほうがかかります。

生活が苦しいなど現在の収入が十分でない場合、成果の還元が遅れることにデメリットを感じるかもしれません。

年俸制で契約するときの注意点

年俸制で働く場合、デメリットのほかにも覚えておかなければならない注意点がいくつかあります。

労働者の無知をいいことに、労働力の一方的な搾取を行う会社もあるため、よく調べてから入社を決めましょう。

みなし残業制の場合でも規定時間以上の残業代は支払われる

みなし残業代制度(固定残業代制度)の場合、規定時間内の残業代が年俸額に含まれることはお伝えしました。しかし、規定時間を超える残業代については、別途残業代が支払われます。さらに、休日労働・深夜労働があった場合には割増賃金が適用され、残業代が計算されます。

なお、みなし残業時間にも上限が設けられています。みなし残業代制度の導入に必要な36協定を結んだ場合、みなし残業時間の上限は原則1ヵ月に45時間・年間360時間までです。

よって、みなし残業代制度を採用している年俸制の企業に就職する際は、労働条件を詳しく確認しなければなりません。雇用契約書に年俸とみなし残業時間が分けて記載されているか確認しましょう。一部みなし残業時間の上限は延長が可能なケースもありますが、基本的にはみなし残業時間が45時間を超える労働条件を提示されたら注意が必要です。

年俸の受け取り方によって各種税金の支払い方が変わる

年俸制では、年俸額を分割して毎月1回以上受け取ります。分割の仕方は会社によって異なりますが、年俸を12分割する「均等割」と14分割・16分割する「ボーナス払い」があります。

均等割りでは、その名の通り年俸額を12ヵ月で均等に割ります。14分割・16分割する場合は、毎月の支給とは別に賞与・ボーナスとして残りを受け取ることになります。どちらの分割方法でも問題はないのですが、社会保険・税金については均等割りのほうが、支払う金額が安く、ボーナス払いのほうが高くなります。

もちろん、社会保険を多く支払えば将来受け取れる年金額が上がるため、必ずしも均等割りのほうがお得であるとはいえません。交渉できるのであれば、希望の支払い方で給与を受け取れるとよいでしょう。

契約後に年俸額が変更することは原則認められていない

年俸制は、年単位で給与額を決める賃金制度で、労使が合意した金額で雇用契約が結ばれます。そのため、年の途中で年俸額を変更することは原則として認められていません。年俸額に賞与・ボーナスを含める場合も、契約後に賞与・ボーナスの有無や金額を変更することはできません。

しかし、実際には会社側から業績不振や成果の程度によって年俸額の変更を強いられ、トラブルになることがあります。裁判に発展したケースもありますが、過去の判例では基本的に年俸額の変更は認められていないので覚えておきましょう。

欠勤・遅刻・早退・退職時には労働に対する報酬が計算される

年俸制において原則残業代が支払われるのと同様に、欠勤・遅刻・早退に対しては働いていない分の賃金がカットされます。しかし、会社によっては欠勤控除をも付けているところもあります。

やむを得ない事情などに対して欠勤控除を行うかは、会社と労働者の間で取り決めることができ、賃金カットがされないこともあります。欠勤控除の有無や条件は就業規則の規定を確認しましょう。

退職・解雇された場合は、退職日当日までの給与が支払われます。年俸制であっても、働いていない期間の給与は受け取れません。年俸額に賞与が含まれる場合、契約の愛用によっては賞与分の支給が行われないことがあります。

年俸制での働き方が向いている人

年俸制は、実力がある人にとっては、自分の頑張りが収入に反映されやすい賃金制度といえます。しかし、デメリットを見てもわかるように、全ての人に向いている働き方とはいえません。

年俸制で働くか迷っている人は、下記の「年俸制での働き方が向いている人」に該当するか確認してみてください。

【年俸制での働き方が向いている人】
・実力を正当に評価してほしい人

・収入の大幅アップを狙いたい人

・収入額を把握して、計画的にライフプランを組みたい人
理想の働き方と異なるという人は、その他の賃金制度での転職が向いているといえるでしょう。

年俸制についてよくあるQ&A

最後は、ここまでの内容で伝えきれなかったことや年俸制における重要なポイントをQ&A形式で回答していきます。

年俸制では残業代が支払われない?

年俸制でも残業代は支払われます。

原則として、残業代は年俸額に含まれません。ただし、みなし残業制度が採用されている場合・管理監督者の場合・裁量労働制の対象者の場合は残業代が支払われないケースもあります。みなし残業制度においては、既定のみなし残業時間を超える残業には超過分の残業代が、深夜勤務・休日勤務には割増賃金が適用されて残業代が支払われます。

年俸制と月給制はどちらのほうが得?

年俸制と月給制のどちらのほうが得なのかは、人によって異なるため一概に言い切ることはできません。

収入ダウンも含めて実力を正当に評価してほしい人や長期的な収入の見通しを把握したい人であれば年俸制の魅力は大きいでしょう。一方で、安定した給与の支給を望む人や直近の成果をすぐ収入に反映させたい人であれば月給制のほうがメリットを感じやすいでしょう。

同じ年俸制・月給制でも会社によって詳細が異なるため、雇用契約書や就業規則をよく確認する必要があります。

年俸制だと欠勤や遅刻をしても給与は変わらない?

年俸制であっても、遅刻・欠勤・早退をすれば給与を減らされることがあります。ただし、それぞれ控除が認められていないわけではなく、会社と合意があれば控除が可能です。

会社によって規定が異なるため、雇用契約書や就業規則をよく確認しましょう。

違法に年俸制で働かされたらどうしたらいいの?

年俸制を導入している企業のなかには、「年俸に残業代を自由に含めることができる」「契約期間中でも年俸額を変更できる」といった誤解をしているところも存在します。

残業代の未払いや一方的な年俸の減額が起こった場合は、労働基準監督署か弁護士に相談しましょう。労働基準監督署への相談では費用の負担はありませんが、十分な証拠がないと動いてくれないことがあります。弁護士への依頼は費用が気になるところではありますが、会社側の落ち度を認めさせやすくなります。しかし、裁判を起こして勝ったからといって、手元にお金が残るとは限りません。

争わず、転職するという道もあるため、まずは労働基準監督署や弁護士の無料相談などで、どのように対応するのがよいのか検討するところから始めましょう。

年俸制で働くなら雇用契約・就業規則を要確認

年俸制は、完全成果主義に近い賃金制度で、高い成果を出せれば収入の大幅アップが期待できます。一方で、収入ダウンの可能性もあり、安定しにくい働き方ともいえるでしょう。また、年俸制だからと、残業代を支払わなかったり一方的に給与額を変更されたりといったトラブルも起きています。

月給制よりも導入している企業や職業が少ないこともあり、不利益に気が付いていない労働者もいるでしょう。年俸制の求人を見つけたら、「法律に沿った運用が行われているか」「実際の労働環境はどうなのか」「労働者が一方的に不利益になる契約ではないか」など労働条件を雇用契約書や就業規則でよく確認することが重要です。

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